CINO ism

『CINO ism Vol.65』欧州の先進企業から、イノベーションの取り組みを学ぶ。-IMSAP Global Studio 2026に参加して-

2026年10月9日

(左)藤原雄彦 常務理事(CINO 兼 イノベーション戦略室長)
(右)高橋秀也(イノベーション戦略室 共創推進第二チーム 部長)

成長を続けるグローバル企業は、どのようにイノベーションマネジメントを構想し、実践しているのか…。その最前線を訪ね、企業の取り組みを学ぶ海外視察プログラムが、一般社団法人Japan Innovation Network(以降:JIN)が主催する「IMSAP Global Studio」です。
今回は、「IMSAP Global Studio 2026」(現地訪問:5月18日~22日)に参加した藤原常務理事(CINO兼イノベーション戦略室長)と、共創推進第二チームの高橋部長に、今回の視察で得た気づきや成果を振り返るとともに、そこから見えてきたOKIの今後のイノベーション戦略について伺っていきます。

世界の先進企業に学ぶ、イノベーションの実践

――「IMSAP Global Studio 2026」の目的は?
藤原:「IMSAP Global Studio」は、IMSの中核的な考え方の原型となった北欧を中心に、デザイン思考を実践する先進的なグローバル企業や研究機関などを訪問し、その取り組みを学ぶプログラムです。イノベーションやデザイン思考に基づく新規事業創出に関心を持つ日本企業から5~6社、15名程度が参加しています。JINのコネクションを活用し、グローバル企業と交流できる絶好の機会だと思い、私自身、OKIのイノベーション責任者として、初回から参加してきました。
今回は、デンマークのコペンハーゲン、ビルン、スウェーデンのルンド、マルメなどの都市を訪問し、「組織のイノベーション」「個人のリーダーシップ」などのテーマを軸に、各訪問先の取り組みを見聞するとともに、参加者同士で議論を深めました。
移動を含め5日間で2ヵ国・4都市を巡るという非常にタイトなスケジュールでしたが、多くの気づきや学びを得ることができました。時差ボケなど体力的にも厳しいツアーでしたが、それ以上に得るものが多い、非常に有意義なプログラムであったと感じています。

課題の探索から事業化までを伴走する組織づくり

――「組織のイノベーション」の視点で感じたことは?
高橋:特に印象に残ったのは、新規事業を探索する部門を孤立させない組織づくりです。例えば、国際的な玩具メーカーであるLEGOでは、新規事業チームから事業部門への移行を、単なる引き継ぎではなく、両者が協働しながら進めていました。また、製薬メーカーのNovo Nordiskでは、上流で得た知見を持つメンバーが、下流の事業化まで伴走する体制が構築されていました。
私が担当する共創推進においても、アイデアを事業部門に渡して終わりではなく、課題の探索から検証までに得られた知見を事業化につなげていく。そのために、事業部門と継続的に伴走する役割が重要だと、改めて認識しました。

藤原:「組織のイノベーション」は、このプログラムが始まった当初からのテーマです。OKIとしても、IMSの実践を通じて、イノベーションを生み出すための組織づくりと、カルチャー改革は着実に進んでいると自負しています。
一方、今回のプログラムでは、新たに設定された「個人のリーダーシップ」というテーマに対して、各社がどのように向き合い、どのような取り組みを行っているのかに強く興味を持ちました。

自分を起点に広げる「360°リーダーシップ」論

――「個人のリーダーシップ」という各社の取り組みで感じたことは?
藤原:私自身は、これまで部下に対するリーダーシップを重視してきました。しかし、特にデンマークの企業では、リーダーシップのあり方について、部下に対する働きかけよりも上司や自分自身に対する働きかけに時間を費やす、という考え方が印象的でした。自分自身で深く考えた上で、それらを実現する為に上司に対して積極的に意見を述べることが奨励されているということなのでしょう。デンマークでは、幼少期から自分の意見を述べることを重視するといった話も聞きましたので、こうしたスタイルが抵抗感なく推進されているのだと思います。日本企業としても、リーダーシップやコミュニケーションのあり方を考えるうえで、とても新鮮な気づきを得ることができました。

高橋:自分自身を起点に、上司・部下・同僚、さらには社会に対してもリーダーシップを発揮する「360°リーダーシップ」という考え方が、とても印象に残りました。
私自身の立場で考えると、共創の場を調整・統括するだけではなく、そこで必要となる条件や環境を整えるために、経営層に働きかけていくことも重要な役割だと感じました。また、現場に「頑張ろう」と呼びかけるだけではなく、現場が抱えている問題や課題を自ら聞き取り、その打開策を自分自身の言葉で整理し、上にも横にも働きかけていく。そんな新しいリーダー像を自分自身に問い続けていくきっかけになりました。

北欧の先進事例から見つめ直す、OKIの強みと課題

――現地訪問を終えて、見えてきたOKIの課題は?
高橋:特に印象に残っているのが、世界的な玩具メーカー・LEGOの商品開発に対する考え方です。彼らにとっての顧客は、あくまで子どもたち。常に子どもたちの行動や思考を深く観察し、そこから得た洞察を起点に、提供する価値を考え、商品開発につなげています。
一方、OKIでは事業や商品を開発する際に、保有している技術、つまり「何ができるか」という手段から考え始める傾向があり、「誰に、どんな価値を届けたいのか」という顧客起点の発想を、より徹底していく必要があると感じました。
ちなみに、訪問先では、アインシュタインが話したとされる「もし問題を解決するために1時間あったら、55分を問題について考えることに使い、5分を解決策について考えることに使います。」という言葉を紹介してもらいました。課題を解決する際には、解決策を考えること以上に、「真の課題は何なのか」を見極め、より解像度を上げることが重要だという考え方です。解決策を急ぐのではなく、より上流の課題探索に時間をかける。その姿勢は、OKIがIMSで重視している「機会の特定」にも通じます。今回の学びを生かし、「機会の特定」により一層重きを置いた推進をしていきたいと思います。

藤原:デンマーク・コペンハーゲンのBLOXHUB*を訪問した際にも、課題探索を徹底するための工夫が印象に残りました。例えば、紹介されたワークショップの事例では、議論の初めに『ソリューション』『テクノロジー』『データ』という言葉の使用を一切禁止する、というルールが設けられていました。技術の話に引っ張られず、まずは「本当に解決すべき課題は何か」を見つけることに集中するためです。課題の探索からスタートするという考え方は、OKIが実践しているデザイン思考/IMSそのものですが、現時点ではまだまだ浸透していないと感じております。今後実施するワークショップで、試験的に取り入れてみようかと思っています。皆の反応が楽しみです(笑)。
また、スウェーデンの学園都市・ルンドを訪問したことも大きな刺激になりました。ルンド市や大学、企業などが連携し、研究施設を核に計画的に発展してきた産学官のエコシステムを実際に見て、そのエコシステムのスケールに感銘を受けました。

欧州での学びを、OKIの新たな挑戦へ

――今後のOKIのイノベーション活動で取り入れたいことは?
高橋:共創推進責任者としてリーダーシップを発揮し、未来のあるべき姿からバックキャストしてシナリオを描き、そこから現状に目を向け、本質的な課題を探索できる「未来デザイナー」を育成するアカデミーのような場を作りたいですね。そこでは、本質的な課題を探索する洞察力と、仲間づくりのためのコミュニケーション力の養成がポイントになると思います。

藤原:今回の視察を通じて、欧州の成長企業がイノベーションを継続的に生み出すための仕組みづくりと、その実践に力を注いでいることを改めて実感しました。それは、OKIが9年近くにわたって取り組んできたIMS活動の考え方と合致しています。今後も、チャレンジする人たちの心理的安全性を確保しながら、OKIのイノベーション活動をさらに加速させていきたいと考えています。そのためにも、今回学んだリーダーシップのあり方や議論の進め方など、欧州企業のユニークな取り組みを、OKIの文化や風土に合わせながら積極的に取り入れていきたいですね。
そして、もう一つ大切にしたいのが、今回のプログラムを通じて生まれた社外とのつながりです。このプログラムには毎回、イノベーションに積極的な日本企業から、多様なバックグラウンドを持つメンバーが参加しています。会社は違っても、イノベーションに挑む「同志」として、連帯感が生まれます。こうしたつながりを一過性のものにせず、大切に育てながら、今後の新たな共創へとつなげていきたいと思っています。

*BLOXHUB:企業・研究機関・行政などが連携し、サステナブルな街づくりのための拠点(HUB)。

(2026年10月9日 藤原雄彦 常務理事(CINO 兼 イノベーション戦略室長))

※CINO:イノベーション責任者

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